【平成十九年十二月】の定例法話会・テキスト
『吉兆』は越すに越されぬ≪船場越え
≪今船場吉兆の不祥事は、『創業者の心、子知らず』と言うべきでしょう≫
今年は数々の食品に関する不祥事が、これでもかこれでもか、と続きましたが、その締めくくりに登場したのが、何と数ある高級料亭の中では別格的存在だった『吉兆』だったとは、誰が予想したでしょう。ただし、今回の『船場吉兆』の不祥事は、創業者≪湯木貞一氏≫の名誉と、他の『吉兆グループ四社』のために敢えて申し上げておきますと、今回の『船場吉兆』の事件は≪船場吉兆≫の事件は≪吉兆グループ五社≫の中の一社で『吉兆』から≪のれん分け≫された≪三女の夫≫が社長を勤める『船場吉兆』が単独で起こした、使用食材の産地表示虚偽違反事件が問題になったわけで、他の『吉兆各社』とは無関係ですが、連日のように新聞各社の紙面を賑わし、テレビ各社も競い合うように報道する出来事に発展したため、他の『吉兆各社』も、経営こそ別であったとしても、問題を起こした≪三女の夫≫が社長を勤める『船場吉兆』、が同じ『吉兆』を名乗るため、他の『吉兆各社』も年末の贈答品の売り上げに少なからず影響を受けているようです。ここで思い起こすのが、新聞やマスコミの世界では、通常では起こりえないことが起これば、それがニュースだということです。
例えば、昔から新聞記者の間で言われてきた言葉の中に(引)「『犬が人を噛んでも「ニュース」にはならないが、人が犬に噛みつけば「ニュース」になる』」というのがあります。
このような話で、名門『吉兆』の事件に喩(たと)えるのは他の『吉兆四社』に失礼かも知れませんが、吉兆以外の他の問題を起こした≪不二家・ミートホープ・白い恋人・赤福に御福、そして比内鶏にミスタードーナツ・マクドナルドと続き、最後に船場吉兆が登場した訳ですが≫この他にも数ある老舗(しにせ)や、有名各店・各社にも、今回の事実を肝に銘じて欲しいと思い『吉兆』の』創業者『湯木貞一(ゆきていいち)さん』の苦闘の歴史と、湯木さん自身が残された『珠玉の金言』とも言える一言を交えてお話しを進めてみたいと思います。
それは11月18日の朝日新聞の朝刊「天声人語」に掲載された次の一文です。
(引)「『昭和5年(1930年)の秋も深まった11月21日、大阪の街で「吉兆」はのれんを揚げた。10人で席が埋まるほどの店である。冷え込んだのだろうか。最初のお客は、銭湯帰りに湯豆腐で一杯やった人だったという。
▲はじめのうちは閑古鳥(かんこどり)が鳴いた。主(ぬし)の湯木貞一さんの妻は、何度もお稲荷様に願を掛けた。厳しさにぶつかりながらも湯木さんは、自分の店で料理が出来ることを、「なんと幸せだろう」とかみしめていたそうだ。( ≪吉兆 湯木貞一のゆめ) 朝日新聞社 』
▲日本料理に打ち込んだ先代の生涯は、つとに知られている。吉兆を指折りの料亭に育て、両理解で初の文化功労者に選ばれた。晩年には ≪商売はお金より、いいお客に恵まれることの方が大事だ≫ と話していた。▲そんな遺訓など忘れたかのような、「船場吉兆」の醜態である。偽装表示はむろんだが、「現場の独断」でやったと、パートの女性らに責任を押しつけようとした疑いも浮かんでいる。彼女らは記者会見をして、涙まじりに「違う」と訴えた。
▲一昨日、とうとう捜査の手が入った。信用をえぐった深い傷は、容易には消えまい。 「結構な老舗(しにせ)の身代を譲り受けながら、奢りなどで身上(しんじょう)を絶やすのは、盗人の百倍の罪にあたる」。江戸時代の商いには、そうした戒めがあったと聞く。
▲戒めは、家業は先代からの預かり物ながら、世間からの預かり物でもある、というモラルに根ざしていたそうだ。いまで言えば、企業の社会的責務ということだろう。軽んじたツケの小さかろうはずはない」。」と、書かれていますが、その二日前の産經新聞のコラム「産經抄」にも、同じテーマで書かれていましたので、新聞界のライバルと自他共に認める両氏のコラムを読み比べて見るのも勉強になると思いますので、こちらも全文をご一緒に読んでみましょう。
では、産經抄より・・・(引)「『20ねんほどまえから、たまに顔を出す居酒屋がある。今でこそ素材にこだわる名店として、雑誌やテレビで紹介されるようになったが、開店してしばらくは、閑古鳥が鳴いていた。ある日のこと、魚市場で見事な太刀魚(たちうお)を仕入れたのに、やっぱり誰も来ない
▲翌日訪れた常連客が、ゴミ箱に突っ込んである銀色に輝く魚を見つけた。焼いたらおいしそうだ。「食べたい」「刺し身で食べさせるつもりだったのだからいやだ」。頑固な主人とのすったもんだは、今も常連客の間で語られる物語のひとつだ。
▲日本を代表する料亭「吉兆」の歴史は、昭和5年11月に大阪・新町に開店した間口2メートル余りの店に始まる。料理界で初めて文化功労者にも選ばれた創業者の湯木貞一さんは、政財界人や外国の賓客の舌を楽しませてきただけではない
▲高級料亭に縁がない人達に、日本料理の心を伝える仕事にも熱心だった。雑誌「暮らしの手帖」に長期連載され、本になった ≪吉兆味ばなし』もそのひとつだ。花森安治編集長らは、季節の素材をつかった料理法や作法とともに、湯木さん自身の物語も聞き漏らさない。
▲開店してすぐは、湯とうふの値段が毎日変わった。お客さんに喜んでもらおうと安くして、次の日には、やっていけないと、また上げる。「まあ、我ながら、いじらしい」とは、ほほえましい。そうかと思えば、お客さんの顔がそろってから、吸い物のだし作りを始めないと「お椀の味が違う」と言い切る
▲その「吉兆」のグループ会社「船場吉兆」の偽装表示問題では、幹部が現場のパート女性や出入りの業者に責任を押しつけようとした構図が浮かんできた。「吉兆」の名前がそれほど大事か。守るべきは、創業者の「物語」の方なのに。』」と、普段は対立的な記事を載せる両紙も今回だけは足並みがそろったようです。そして、今回の一連の事件は『善も悪も』人の心から生まれる事を私達に教えているようです。
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