【平成二十二年一月】の定例法話会・テキスト
『苦行法の間違いに気づいた王子は』
≪前正覚山を下り、村の娘スジャータから乳粥の供養を受け元気になった≫
(お釈迦様‥・その7)
シッダールタは、自分の出家を思い止まらせようとして説得に失敗し、止むを得ず出家をした五人の比丘達を引き連れてガンジス河を渡り、出家直後、パガワ仙人に勧められた「アーラーラ・カーラーマ仙人」に会うため、マガダ国へ入りました。マガダ国の首都、王舎城内を托鉢し終わったシッダールタは、近くのバンダバ山に登り、樹下石上に結跏趺坐(けっかふざ)し、静かに瞑想に耽っていました。
一方、この国の王「ビンビサーラ」は、侍者から城下の賑やかな様子について「城下で騒がしいのは、以前、遠いヒマラヤに近い国のカピラ城で、誕生間もない王子シッダールタの姿を見た、高名なアシダ仙人が、≪やがては偉大な仏になるであろう≫と予言をされた事があります。今、その王子シッダールタが出家をして、この国へ来ているのです。それで城下の民衆の間では大変な評判になっているのです。」と、聞き早速車に乗って、シッダールタが瞑想しているパンダバ山を訪れ、この国へ来られた事を歓迎する言葉を述べた後、次のように丁重に話しかけます。
「シッダールタ太子‥・。私は、小さい時に次のような五つの願を起こしました。
その一番目は、自分が大きくなったら、父王の後を継いで、自分も王になりたい。
二番目には、自分が王になった時、ぜひ仏と言われる人の出世に出会いたい。
そして、三番目は自分が実際に仏にお逢いして、親しく供養をしてさしあげ。
四番目には、仏が真実真理の教えを説かれる時、その場にいて喜びの心で聞き。
そして最後に正しい法を聞きそれを信じ、それを理解したい、と願ったのです」。
しばらく沈黙が続いた後、ビンビサーラ王は再び話し始めました。
「ところで、シッダールタ太子‥・。失礼とは思いますが、もしかしたら、太子が王位を継ぐことを捨てられたのは、父王から王位を奪う事を願わなかったからではありませんか‥・?もしそうであれば、この国を私と二人で治めてみる気はありませんか。いや、この国を半分あなたに差し上げても良いし、なんなら、この国を全部差し上げて、私が、あなたの家来になっても良いと思っています。」
ビンビサーラ王は、やがて偉大な仏になるであろう「シッダールタ」を、何とか自分の傍へ引き止めようとして必死でした。このビンビサーラ王の申し出を、シッダールタは次のように、丁重に断ります。
「私が、父王や母に別れを告げ、頭髪を剃り国を捨てたのは「生・老・病・死」の「四苦」を断つためであり、決して五欲の快楽を求める為ではありません。」
そして、シッダールタは、さらに言葉を続け、自分が生まれて七日目に母を亡くして、命のはかなさを知り、やがて成長をするにつれて次第に深く物思いに耽るようになり、ある時、城の「東・西・南・北」の門を出て、人々の「老いる苦しみ・病む苦しみ・死ぬ苦しみ」を目のあたりにした結果「生きることの苦しみ」を実感してこれら四つの苦しみを絶つ≪真実真理の覚り≫への法を求めて城を出たのが、出家をした本当の理由であると云う事を、静かに落ち着いて話し終えました。この言葉を聞いたビンビサーラ王は、シッダールタの決心が並大抵のものでないことを知り「それでは、太子がやがて真実真理の道を極めて、覚りを得て成道された時は、是非、王自身とマガダ国の人々の為に説法して欲しい。」と頼んで帰って行きました。
ビンビサーラ王と別れたシッダールタは、意を決したように尼連禅河を渡って、王舎城の北にあるメール山に、アーラーラ・カーラーマ仙人を訪ねます。
当時のマガダ国には多くのバラモンの学匠達が集まっていましたが、その中でも、最も徳が高いと言われていたのが、アーラーラ・カーラーマと、ウッタ力・ラーマプッタの二人の仙人でした。
メール山に着いたシッダールタは、早速アーラーラ・カーラーマ仙人を訪ね、≪真実真理の法≫の奥義に到る方法について教えを受けようと質問しますが、仙人は、やたら難しい理屈を並べ立てるだけで、いつまで経っても肝心な、シッダールタの質問の核心に触れようとせず、さっぱり要領を得ません。
シッダールタは失望しました。
あれだけ高名で、徳の高さでは第一と言われている、アーラーラ・カーラーマ仙人が、長い修行を通じて得たものは「たったこれだけだったのか・‥。」と。
自分が求めているものが、何一つ得られなかったシッダールタは仕方なくアーラーラ・カーラーマ仙人のもとを去り、その足で今度はウッタカ・ラーマプッタ仙人を訪ねます。
シッダールタは、ふたたびウッタカ・ラーマプッタ仙人にも、同じように法の奥義に到る方法について質問しますが、やはり納得の行く答えが得られません。
希望を胸に、当代随一と言われる、二人の仙人に教えを受ければ、長年自分の抱いていた疑問が悉く氷解し、明確な答えが得られるものと期待していただけに、シッダールタの落胆ぶりは傍目にも目を覆うばかりでした。
しかし、暫く考え込んでいたシッダールタは、突然、気を取り直すと「そうだ、自分が求めている(無上菩提を証し、一切種智を成ぜん)と云う希望を達成する為に、人から法を聞き、それを会得しようとした自分が間違いであった。」と気づきました。
「たとえそれが、どのような優れた教えであったとしても、只、他人から教えを聞くだけでは駄目で、やはり自分が真剣に努力をして修行をし、自分自身が体で感じ取らなくてはならないはずだ」。と、思い直しました。
そう思ったシッダールタは、早速、自らの手で真実真埋への道を極める修行を決意し、尼連禅河の東岸にそびえ立つ、前正覚山に登って行きます。
そこは以前、自分の出家を思い止まらせようとして失敗した五人の比丘達が、既に修行をしている険しい山でした。
いよいよ、ここからシッダールタ自身の、六年にも及ぶ長い苦行が始まるのです。本格的な苦行に入ったシッダールタの修行法は、言語を絶する程の凄まじさで、断食も含む厳しい行のため「顔貌愁悴、身形萎熟(がんぼうしゅうすい、しんけいいじゃく)」と、仏典に伝えられているように、その形相は、顔色に生気無く、身体枯木のごとく痩せ細り、その姿は見る者の目を、思わず背けさせるような凄まじさでした。
その姿を見かねた五人の比丘達のリーダー「カウンジンヤ」は、急いで一人の比丘をカピラ城に走らせ、シッダールタの状態を「身形消痩して、皮骨相連なり血脈(けちみゃく)、悉(ことごと)く現(あら)われ」と報告させます。
「その姿は、骨と皮ばかりに痩せ細り、全身に血管が浮き出ています」と、報告を受けて驚いた、父「シュッドーダナ王」は、早速、食物を送ろうとしますが、それをシッダールタは辞退し、ひたすら乞食行を行じ、苦行を続けるのでした。
シッダールタの、恐ろしい程の鬼気せまる修行の姿を見て、五人の比丘達も、その迫力に引き込まれるように、自分達も同じように苦行に精を出すようになりました。‥・やがて六年の歳月が過ぎ去りました。
シッダールタの肉体は、最早、辛うじて生きている、と云う状態まで憔悴(しょうすい)し切っていて、これが生きている人間だとは、とても信じられぬ程でした。
長い間、これ程の苦行をしてきたのにバンッダールタは未だ解脱できません。
「これ程の苦しい修行をしても、未だに解脱出来ないのは、なぜだ・‥。」
シッダールタは、ふと思います。「自分は、このまま修行を続けていても、永久に覚りを得られないかも知れない。もしかしたら、今まで続けてきた苦行は、自分の求めている解脱真正の道に、繋がらないのではないだろうか。」
心の中に、次第に焦りと不安を感じ始めたシッダールタは、以前、閻浮樹(えんぶじゅ)の下で、欲を離れて寂静の坐禅をしていた時の事を思い出しました。
「ひょっとしたら、その方が真実の悟りを得られるかも知れない。」
「そうだ・‥!きっと、今迄の修行方法が間違っていたのだ・‥!」
そう考えたシッダールタは、さらに「命懸けで真実の道を求めようと云うのに、この様に体力が衰え、気力さえも弱まるような苦行では、とても、覚りを求める力が湧いて来る筈が無いではないか・‥。」
「よしっ・‥!修行の方法を変えてみよう・‥。」そう思ったシッダールタは、早速、前正覚山の苦行林を出て、尼連禅河へ向かいます。
シッダールタは、そこで身も心も清める為に沐浴をします。
ゆっくりと時間をかけて沐浴を終わり、六年間の汚れを洗い落として、すっかり身も心も清らかになったシッダールタは、いざ岸へ上がろうとしましたが、長い苦行で身体が衰弱している為、足元がふらつき思うようになりません。
シッダールタが、なんとかして岸へよじ登ろうとして苦労をしていると、そこへ「スジャータ」と云う村の娘が近づいてきて、手にした乳粥を差し出します。
この様子を、じっと苦行林の中から見守っていた五人の比丘達は、以前、父王シュッドーダナの差し入れでさえ断ったシッダールタだから、当然その娘の差し出す乳粥も受け取らぬだろうと信じ、固唾(かたず)をのんでその様子を見守っていました。ところがシッダールタは、何のためらいも見せず、この娘「スジャータ」から乳粥を受け取るとさも旨そうに全部食べてしまったのです。
シッダールタにすれば、修行方法を変えたのですから当然のことですが、その事を知らない五人の比丘達は、腰を抜かさんばかりに驚きました。
そして、あれほど強い意思を見せていたシッダールタも、ついに、厳しい苦行に耐えきれずに脱落してしまったと思い、もう「シッダールタ」を相手にするのは止そうと、腹を立てて、さっさと西の方のバーラーナシーヘ向かって旅立ってしまいました。スジャータの乳粥と、正しい食事に依って、間もなく心身共に元気を回復した「シッダールタ」は気力も充実し、やがてブッダガヤのピッパラ樹(菩提樹)の下へ行き、柔らかい草を集めて座を整え「正覚を成ぜずんば、この座を起たじ。」と云う、凄まじい気迫で結跏趺坐し坐禅三昧に入りました。
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